血液内科医の論文と日常

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自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の概念

 

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)とは?

自己免疫性溶血性貧血(Autoimmune Hemolytic Anemia:AIHA)は自己免疫疾患の一種であり,なんらかの原因で抗赤血球抗体が産生され
赤血球が破壊亢進(溶血)することによって生じる後天性溶血性貧血の総称である.

 

(和田 秀穂:血液内科.78(2):170-176,2019)より
 

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の分類

分類方法

  1. 抗赤血球自己抗体の至適温度作動域
  2. 抗体の種類
によって分けられる.
 

抗赤血球自己抗体の至適温度作動域によって

  • 体温近くである温式(warm type)
  • 4℃前後の冷式(cold type)
の大きく2つに分類される.
頻度は下記図のとおりであり,
多くは温式AIHAだが
CAD(20%), PCH(1-5%),Mixed AIHA (5-10%):IgMとIgAの2つを有する.
といった頻度であり.
 
 

Current and emerging treatment options for autoimmune hemolytic anemiaより
 
 

4℃前後の冷式(cold type)について

寒冷凝集素症(CAD:cold agglutinin disease)
発作性寒冷血色素尿症(PCH:paroxysmal cold hemoglobinuria)
の2種類に分けられる.
 
寒冷凝集素症(CAD:cold agglutinin disease)
 (British Journal of Haematology, 2018, 181, 320–330)
CADを誘発する寒冷凝集素は大半はIgM
直接クームス試験では補体成分が検出される.(IgGは検出されない.)
凝集素価(Titer)をみる.
 
続発性の場合はマイコプラズマや,CMV,伝染性単核球症を鑑別する.
 
 
貧血以外の症状として,血球が凝集する循環障害のため四肢末端チアノーゼ,レイノー現象などがある.
 
診断には,
「寒冷凝集素価>512倍」+「直接クームス試験陽性」
が必要である.
 
発作性寒冷血色素尿症の概念(PCH:paroxysmal cold hemoglobinuria)
自己の赤血球に対して溶血活性をもった
二相性自己抗体(Dounath-Landsteiner抗体)が出現し,これにより溶血をおこす.
梅毒性のPCHが有名であったが,最近はあまり聞かない.
ウイルス感染に続発するものが多く,小児例が大半を占める.
 
クームス陰性AIHAについて
温式AIHAの5-10%程度に直接クームス試験陰性の症例がある.
これを,クームス陰性AIHA(Coombs陰性AIHA)という.
これは,クームス試験の感度以下のIgG抗体が赤血球に結合しており,他に低親和性IgG自己抗体や,IgAもしくはIgM自己抗体があることがある.
対策としては,試験管法の直接クームス試験ではなく,カラム法のクームス試験を用いたり,赤血球定量IgGを測定する(RIA法)などが試される.
(Acta Haematol. 2018;140(1):10-17. )
 
 
 

直接クームス試験(広範囲)陽性であったときの考え方.

溶血所見+直接クームス試験(DAT)陽性=免疫性溶血
溶血所見があり,直接クームス試験陽性の場合は免疫性溶血と考え
AIHAを強く疑う.
そのため,IgGや補体を個別に検出できる特異的クームス試験に進む.
 
直接クームス試験(DAT)陽性+非溶血の場合
高ガンマグロブリン血症によるIgGの赤血球膜上への非特異的吸着
薬剤性(α-メチルドーパ,ペニシリンセフェム系,NSAIDsなど)
抗CD38抗体製剤(ダラツズマブ)
などを考慮する.
(健常人でも0.01%で検出される.IgG陽性の3%はその後AIHAを発症する.)
亀崎 豊実:血液内科.78(2):170-176,2019)
 
直接クームス試験(DAT)陰性+免疫性溶血≒クームス陰性AIHA
直接クームス試験は陰性だが,免疫性溶血が疑われる場合はクームス陰性AIHAの可能性が高い.